太陽と月と花火と

不確かな記憶の中に生きている

好きだった図書室のはなし

小学校のころ、部活動に入っていない時によく図書室に行っていた。たしか四年生か五年生くらいだったと思う。

ナルニア国物語にどっぷりハマってしまって、借りるときと返すときに図書室に行ってはそのまま読んでいたこともあった。

 

本の裏表紙の裏にある貸し出しカードに、知らない名前や日付の古そうなきっと先輩であろう人たちの名前を見ると、とつぜんタイムスリップしたかのような、その時はただ単に、ぎゅっとしかしやわらかく胸が締め付けられるような不思議な感覚になった。

きっとこの現象は、学生の頃に本の虫時代を過ごしたひとにはあるあるなのかと思う。ハリーポッターで言うなら、ハリーが例のあの人の日記を見つけた時のような感覚。まぁ、白紙でもないし、答えてもくれないけどね。

 

ふと顔を上げると、図書室の窓から西日が差し込み、本棚や木製の丸テーブルや椅子に色を付けていた。カラフルかと言われると違うが、鮮やかだった。本棚には、本たちが明暗をくっきりと分けられ、背表紙にばっちり光が当たっている本は、まるで私は面白いぞと訴えているかのようだった。

 

 

 

太陽がはやく沈むようになってきて、思い出した。

 

 

今度、君に会ったら話をしてみようと思う。十何年も前のことを思い出したことを、そして君にもあるであろうやわらかくあたたかな思い出についても教えて欲しいと思ったことを。

 

 

虹の中にいるひとにはその虹はみえず、虹の外にいるひとはそれを羨む話があるけれど、暗いところにいても進んでさえいれば明るいところにいけるのかもしれない、自分では気づけなくても。